はじめに
先日施工したホンダ N-BOXのガラスコーティングで、特に印象深かった“苦戦エピソード”をご紹介します。
N-BOX、特にブラックは、ディテイリング業界では「下地づくりが最も難しい車種の一つ」として知られています。
ただ、今回はさらに特殊な状況が重なり、想像以上に難航した施工でした。
N-BOX塗装の特徴:柔らかさ × 低密度の壁
ホンダ N-BOXの塗装は、『柔らかい』『低密度』という特徴があります。
『柔らかい』のは、軽自動車では一般的なのですが、黒い塗装だとバフ傷が目立つことから、しっかりと鏡面仕上げをする必要があります。
『低密度』これはホンダ車に見られる傾向で、N-BOXはその典型例です。
低密度ということは、塗膜に微細な“隙間”が多く、色々なものを吸い込むのです。
例えば、酸性やアルカリ性のケミカルを吸い込んでシミになりやすく使用が難しい。
研磨時にはコンパウンドを吸い込んで、「拭き取れない」「焼き付きやすい」という難しさが出てきます。
この『低密度』が、N-BOXが難しいと言われる所以です。
苦戦ポイント①:傷の深さ × 硬質化 × 低密度
柔らかいクリア塗装でも、クリア塗装が紫外線などで劣化してくると、硬質化して白く曇ってきます。
これがさらに進むとクリア塗装の剥がれが発生してきますね。
今回も8年経年ということで、案の定クリア塗装が硬質化を起こしていました。
通常は、硬質化していると研磨力があるバフで研磨したら良いだけの話なのですが、N-BOXの塗装は『低密度』なのでこれができないのです。
研磨力が高いバフを使うと、熱が上がってコンパウンドが焼き付いてしまうのです。
つまり、硬質化したクリア塗装を研磨力の低いバフで磨かないといけない状況ということです。
更にですよ、元々は柔らかい塗装面であったことから、洗車機を使用した傷が深く入っているのです。

右のパネルは一度磨いています。左のパネルがクリア塗装の曇りと螺旋状の洗車傷入っている状態ですね。

一回磨いた状態がこれですね。洗車傷は残っているけどクリア塗装の曇りは取れて、塗装本来の色が出てきました。
通常は、1回の研磨で洗車傷も取ってしまわないといけないのですが、バフやコンパウンド、ポリッシャーの組み合わせを変えても、焼き付かずに傷取りができるものが無く、この仕上げが限度と判断して車を1周磨きました。
苦戦ポイント②:艶の気づきと振り出しに戻る
車を1周磨き上げる際に、最後のパネルを磨いている時です。
クリア塗装の曇りが強く、曇りすら取れなかったので、ポリッシャーの回転速度を思い切って普段使うことがないほどのほぼMAX回転で研磨してみました。
そしたら、「ん? 他の面より艶々してる…」
詳しく見たところ、諦めていた洗車傷が消えていたのです。
理屈的な話は、回転速度を上げると通常研磨熱が発生してコンパウンドが焼き付きますが、押しつけを弱くすることで熱を抑えたので、単純に磨き回数を増やした状態になったのかなと考えています。
名付けて「ちりつも磨き」!
自分の中で、このまま鏡面磨きをするか、もう一度磨き直すかを数分考えましたが、妥協できない性格上しっかりファーストポリッシュを再度実施しました(笑)
もはやファーストポリッシュでは無いのですが、本来ファーストポリッシュで仕上げる磨きなので、振り出しに戻って磨き始めました(笑)
結果がこれです。

左のパネルが再度磨き直した後、右は前回の磨き状態です。
僅かですが、艶が違いますよね?
仕上げ工程と“素肌美人”の完成
ファーストポリッシュが終了した後は、鏡面磨きを実施します。
鏡面磨き後がこちらです。

何かを擦ったような深い傷はどうしても残りますが、洗車傷はもう無く、新車並もしくはそれ以上の塗装面に仕上がっています。

こちらが、鏡面磨き後です。
コーティング施工前でこの仕上がりです。
大変でしたが、新たな発見もあり興味深い経験ができました!
ここまで来ると、我が子のように愛着が湧いてきます(笑)
まさに素肌美人!
この後は、ポリッシャーの入らない所を手磨きして、脱脂・コーティングを実施して完了です。