はじめに
超撥水や高撥水のコーティングを施工して、ボンネット上の雨が細かい水滴になっているのに、全然流れないことに疑問を抱いたことはないですか?
元航空整備士の私が、流体力学を絡めて、撥水の水滴の流れについて解説します。
境界層について
まず、空気にも粘性があります。
なので、物体の表面を流れる空気は、物体に張り付こうとします。
結果として、物体表面を流れる空気は速度が大きく減速して、殆ど流れがありません。
物体からの距離が開くほど、空気の速度が早くなっていきます。
この遅い空気の層が、境界層です。
言葉だけだと少し難しく感じるかもしれませんが、簡単に実験する方法があります。
それは、車で走行中に窓を少し開けて、窓枠に指を当ててみて下さい。
空気がほとんど流れていないはずです。
指を窓枠から離すとすぐに空気の流れを感じるはずです。
注意:運転中は危険ですので、助手席等で試してください。また、手を大きく窓から出すと危険ですので、安全を確認して、窓から数センチの範囲内でお試しください。
他にも、ドアなどに付いている虫がいつまでも落ちずに張り付いていられるのも境界層のお陰ですね(笑)
車の撥水した水滴の流れについて
走行したら、水滴が後ろに流れていくようにイメージされるかもしれませんが、運転席から見えるボンネット上の水滴が、ずっと同じところに留まっているのを不思議に思ったことはございませんか?
これは境界層の影響により、ボンネット上の空気が止まったままであることが原因です。
フロントバンパーやグリルなどの切り立った部分は、風圧を正面から受けるので、水滴が流れていきます。
それ以外のボンネット、ルーフ、サイド、リア部分は、空気の流れがほとんどないことから、水滴は流れていきません。
ただ、空気の流れ以外にも、『重力』『慣性力』『遠心力』の影響で水滴が流れます。
垂直になっているパネルや急加減速時、急カーブ時に水滴が流れます。
撥水加工のメリットデメリットは?
塗装面の撥水加工のメリット
- 大雨時に汚れが流れる
- 洗車後の拭き上げ時に、塗装上に水分を残さない
- 洗車後の拭き上げ時に、タオルの濡れが少ない
デメリット
- 撥水した水滴周りに汚れが集まり、水滴型の汚れができる
- 水垢が水滴型になり目立つ
つまり、デメリットは各汚れが水滴型になることですね。
親水だと汚れが塗装面に広く付くので目立ちにくいですが、結局洗車をしないと汚れの蓄積は発生します。
私個人の意見は、洗車しやすい撥水タイプがおすすめです。
また撥水タイプは、水弾きが悪化した時(汚れの蓄積)にすぐに気づくことができます。
当社の撥水タイプのコーティング剤
プロコーティングPCX-S8、セラミックコーティングEXE-zero7
親水と低撥水のハイブリッドコーティング剤
プロコーティングPCX-S9
ウインドウ撥水は?
ウインドウを撥水加工される方も多いですよね?
ただ、フロントウインドウにも境界層が発生するので、高速道路を走行する程に加速しない限り、ワイパー無しで走行することは難しいです。
またウインドウの撥水性能は、耐久性と反比例する関係にあり、高撥水であればあるほどすぐに効果がなくなってしまいます。
サイドウインドウ、リアウインドウは、境界層の影響で、雨粒が流れないだけでなく、撥水加工の影響で水滴は細かく付くので、視界不良になることが多いです。
私の個人の意見としては、サイドウインドウ、リアウインドウは、油膜取りや親水加工により親水状態しておくことが理想の環境だと考えます。
フロントウインドウについては、油膜や水垢を取りつつ、常に正常なワイパーを装着しておくことが理想だと考えます。
因みに当社のウインドウコーティングは、撥水コーティングではなく、ウインドウ用のガラスコーティングです。
撥水特性はありますが、撥水が目的ではなくウインドウに水垢が付きにくくするためのものです。
どのウインドウコーティング、撥水コーティングにも言えますが、滑りの良い撥水ワイパー等を併用する必要があります。
通常のワイパーだと、コーティング剤を剥がしてしまうのと同時に、ワイパーにビビりが発生し、異音やコーティング剤の部分的な剥がれが油膜のようになってしまいます。
まとめ
撥水加工をしても走行中に水滴が流れないのは、「境界層」によるものです。
ボンネットやルーフなどは空気がほとんど動かないため、水滴はその場に留まりやすく、流れるのはバンパーなど風を正面から受ける部分や慣性・遠心力が働いたときです。
撥水コーティングには「水弾きで洗車が楽になる」「汚れに気づきやすい」などのメリットがある一方で、水滴型のシミが残りやすいというデメリットもあります。
ウインドウについても同様に、撥水だけに頼るのではなく、親水加工や油膜除去、正常なワイパーの使用と組み合わせるのが理想的です。
つまり、撥水は性能は、境界層の仕組みを理解した上で正しく選択することが大切です。
当店では、塗装面・ウインドウそれぞれに最適なコーティングを提案していますので、気になる方はぜひ一度ご相談ください。
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